四半世紀を超えて愛されるモデル「ナイキ エアモック」

1994年に誕生し、今なおカルト的な人気を誇るナイキ エアモック。今回はその中でも、オリジンに近い2006年復刻モデルのレビューをしたいと思います。
毎回このメディアでは製品を購入してレビューする流れではあるのですが、購入後ストックしていた「ナイキ エアモック」を「そろそろ卸そうかな?ストックしっぱなしも何だし…」と考え、せっかくなら記事にしてしまおうと考え、レビューさせていただきます。
筆者にとっては実質3足目の「ナイキ エアモック」。今までそこまで意識していなかった履き心地や、今だからこそ気が付けるポイント等を解説していきます。
この記事の要点まとめ
- 最高の履き心地には理由がある! 靴ひもがない独特な見た目のエアモック。もともとは山登りをする人の「休憩用の靴」として生まれたため、足を優しく包み込むような、最高にリラックスできる履き心地が最大の魅力です。
- サイズ感とコーデを写真で解説! 気になるサイズは「少し大きめ」がおすすめ。この記事では、失敗しないサイズ選びのコツから、ジーンズなど普段の服装にどう合わせるかまで、たくさんの写真を使って分かりやすく紹介します。
- 【最重要】でも、このモデルは今買っちゃダメ!? 実は、この記事で紹介している2006年モデルは、今から探すのは要注意!古い靴特有の「靴底が剥がれる」という弱点があり、修理にお金がかかる可能性大。記事を最後まで読めば、その理由と購入で後悔しないための大切なポイントが分かります。
「ナイキ エアモック」との出会い

写真は復刻版(恐らくスエードモデル)
筆者と「ナイキ エアモック」の出会いですが、確か日本で発売された翌年の1995年。
最初に購入したのは実は「エアモック」ではなく「エアチャッカモック(茶)」でした。
「エアチャッカモック」は「エアモック」のハイカット(チャッカブーツ)版として、翌年に登場しました。
エアモックの独特なデザインと快適な履き心地はそのままに、足首を覆うデザインになったことで、よりブーツライクな履きこなしが可能になり、こちらも人気モデルとなりました。
こちらはかなり履き込みました。当時は靴の手入れ等もせずに履きっぱなしだったのですが、ヌバックレザーが擦れて艶が出て、かなり良い味を出していました。

筆者保有のエアモック2006復刻版

藤原ヒロシ氏が着用した雑誌
同年「エアモック(黒)」も購入し、1シーズンは2つを履き分けていました。
で、そもそもの「ナイキ エアモック」との出会いですが、当時20歳の若者であった筆者が影響を受けていたのは、当時のファッションリーダーの2台巨頭の一角を担っていた「藤原ヒロシ」さん(もう一人は言わずもがななキムタクです)。
雑誌で履いているのを見かけ、購入に至りました。
後に少しプレ値で取引されていたような気もしますが、購入タイミングが早かった為、定価で購入できた記憶があります。(確か両方とも原宿で購入、店舗までは失念…BILLY’Sとかだったような…)
ナイキ エアモックとは?その唯一無二の魅力とは?
レビューを始める前に、まずはこの風変わりで、しかし多くの人を惹きつけてやまない「ナイキ エアモック」というスニーカーが、いかにして生まれ、どのような魅力を持つのかを深掘りしていきましょう。この靴の背景を知ることで、2006年の復刻モデルが持つ意味合いも、より深く理解できるはずです。
ACGの異端児、エアモックの誕生(1994年)

エアモックが産声を上げたのは1994年。ナイキのアウトドア部門である「ACG(All Conditions Gear=全天候型ギア)」から、まさに異端児として登場しました。当時のスニーカーシーンは、エアマックス95に代表されるような、ハイテク技術と複雑なデザインを競い合う真っ只中。そんな時代に、エアモックは全く逆の方向を指し示していました。
開発の背景(クライマーの休息用シューズ)
このユニークなシューズのルーツは、ロッククライミングにあります。その開発コンセプトは「アフタークライムシューズ」。つまり、クライミングで酷使した足を、窮屈なクライミングシューズから解放し、リラックスさせるための休息用シューズでした。
キャンプサイトや山小屋で、疲れた足を優しく包み込み、それでいて脱ぎ履きが簡単なこと。この明確な目的が、後のミニマルなデザインへと繋がっていきます。厳しいアウトドア環境で活動する人々の「本当に必要なもの」に真摯に向き合う、ACGの精神が生んだ必然のデザインだったのです。
当時のスニーカーシーンに与えた衝撃
前述の通り、1994年はエアバッグのビジブル化が進み、派手なカラーリングのスニーカーがストリートを席巻していた時代です。そんな中で登場したエアモックは、靴紐すらない、まるで原始的な履物のようなルックスでした。
そのあまりにもシンプルで削ぎ落とされたデザインは、当初「これは本当にスニーカーなのか?」と多くの人を戸惑わせました。しかし、その唯一無二の存在感と、コンセプトに裏打ちされた究極のコンフォート性能は、ファッション感度の高い層や、本質を求めるアウトドア愛好家たちの心を鷲掴みにします。派手さとは無縁の静かな佇まいが、逆に強烈な個性としてシーンに受け入れられ、カルト的な人気を博すに至ったのです。
ミニマリズムを極めたデザイン
エアモックの魅力を語る上で、その「引き算の美学」とも言えるデザインは欠かせません。構成するパーツはごく僅かで、それぞれが明確な機能を持っています。
一枚革(ヌバックやスエード)のアッパー
アッパー(甲の部分)は、縫い目を極力減らした一枚の革(あるいはそれに準ずる素材)で袋状に作られています。これは、ネイティブアメリカンの伝統的な靴「モカシン」からインスピレーションを得た構造です。足を優しく包み込むフィット感と、素材そのものの風合いを最大限に活かすための、見事な設計と言えるでしょう。
ヒールのドローコードシステム
エアモックには靴紐がありません。その代わりにフィット感を調整するのが、かかと部分に配置されたドローコードです。プラスチック製のストッパーで絞るだけで、足全体のフィット感を簡単に調整できるこのシステムは、脱ぎ履きのしやすさと、歩行時のかかとの浮きを抑える機能性を見事に両立させています。この機能的なディテールが、デザイン上の強力なアクセントにもなっています。
エアユニットを搭載した快適なソール
見た目は非常にシンプルですが、そこはナイキ。ミッドソールには、ブランドの代名詞である「エアユニット」が内蔵されています。これにより、地面からの衝撃を和らげ、見た目からは想像できないほどの快適なクッショニングを提供します。リラックスシューズとしての目的を、ナイキが誇るテクノロジーでしっかりと支えているのです。
なぜ今もファンを魅了し続けるのか?
発売から約30年。エアモックはなぜ今もなお、多くの人々を魅了し続けるのでしょうか。
時代を超越したデザイン性
最大の理由は、その時代に流されない普遍的なデザインにあります。特定のトレンドに属さない究極のシンプルさは、いつの時代に見ても古さを感じさせません。アウトドアスタイルはもちろん、モード、ストリート、あるいはきれいめなスタイルの「はずし」としても機能する懐の深さ。この唯一無二のデザインは、もはや一つの完成されたアイコンとして確立されています。
様々なブランドとのコラボレーションの歴史

そのアイコン性は、数々の先進的なブランドをも惹きつけてきました。コム・デ・ギャルソンやUNDERCOVERといった日本を代表するモードブランド、さらにはシュプリームとのコラボレーションの噂が立つなど、エアモックは常にファッションの最前線とリンクしてきました。これらのコラボレーションは、エアモックが持つポテンシャルを再認識させ、新たなファンを獲得するきっかけにもなっています。
復刻の歴史と2006年モデルの位置づけ
エアモックはこれまで、幾度となく復刻を繰り返してきました。大きな流れとしては、90年代後半のフリース素材の登場、2000年代のカラーバリエーションの拡大、そして2010年代以降のアップデート版(「エアモックウルトラ」など)の登場が挙げられます。
その中で、今回レビューする2006年の復刻モデルは、オリジナルに近いヌバックレザーの質感を持ちながら、安定した品質で供給された時期のモデルとして位置づけられます。オリジナルへのリスペクトを感じさせつつ、多様なカラーリングが展開されたこの時期の復刻版は、往年のファンから新しい世代まで、多くのユーザーが手に取りやすい「良質な復刻」として記憶されています。まさに、エアモックの歴史を語る上で欠かせない、重要なピースの一つなのです。
詳しくはこちらの記事もご覧ください。

【写真多数】2006年復刻版のディテールを徹底チェック

外箱正面:真紅ではなく朱色に近いカラーの外箱

箱の横にはNIKE AIR MOCの文字とサイズ表記。
「312454-021」は製品番号。



ヌバックの質感とフォルムがとても良く、後のシリーズは機能的には優れているのだろうが、やはりオリジナル(これは復刻だが)が原点にして頂点といえるだろう。



インソール:一度足を通したのちに撮影したので、若干毛玉がありますが…

ヒール部分:中古の個体ではこのヒールの部分にダメージが出ている物が多く存在するが、この個体ノーダメージ。ドローコードは付いているが、気休め程度の機能なので使うことはほぼ無い。(筆者は一度も使った事が無い…)

側面:1枚革とアウトソールで構成されたサイドにスウォッシュのみのシンプルなデザイン。

側面:オリジナル(復刻ですが)と最新のモデルを比較すると、フォルムの違いは一目瞭然。好みもあるので、どちらが良いとは言えませんが、ローテク感の強いオリジナルの方が筆者は好みです。
下の比較画像を見ていただくと分かりますが、ソールのパターンも異なるようです。

フォルムの比較

アウトソール:正直グリップ力はそこまで高くない。雨の日につるつるのタイル上などでは正直滑ります。
ただ、当時のコンセプトが「クライマーの休息用シューズ」なので、仕方がないかと…
過去に履いていた個体ではソールの耐久性は十分だったと記憶しています。
「ナイキ エアモック」のサイズ感と履き心地
「ナイキ エアモック」のサイズ選びですが、サイズ選びの際にはご自身の足のサイズよりも0.5~1cm大き目で問題ないと思います。(筆者は実測25.5cmで26cmをチョイスでちょっとだけゆとりあり)
他のナイキのスニーカーだと1.5cmアップしたりしますが、ジャストで履きたい場合は0.5cm位が丁度良いと思います。
※冬場のキャンプ等で厚手の靴下を履いている場合等は、1.5cm大きくても良いかもしれませんが、その際はショップでの試着をおすすめします。
前述しましたがナイキの「エアモック」あくまでも「クライマーの休息用」として世に生まれました。
なので、がっつり歩いたり、激しい運動をする想定では作られていませんので、余裕のあるサイズ感が正解なのだと思います。
エアモック 2006年復刻版はこんな方におすすめ
①オリジナルのフォルムにこだわる方
②コレクターアイテムとして購入を検討している方
③他の方と同じものが嫌な方
④楽にはけてリラックスできる靴が欲しい方
筆者は正直①です。現在販売されている製品の方が性能的には優れていると思うのですが、どうしてもオリジナルのフォルムにこだわりたかった…
正直履き心地よりも見た目を取りました!
マニアックな方以外上記の①②には当てはまらないと思いますので、素直に現行販売(もしくは直近に発売された)のモデルの購入をおすすめします。
エアモックを使ったコーディネート例
最近の若者の流行りには正直疎いオジサンなので、あくまで一般的なパンツと組み合わせたイメージを載せてみます。
濃いめのデニムと併せたイメージ

薄めのデニム(セコハン)と併せたイメージ

ブラックデニムと併せたイメージ

ベイカーパンツと併せたイメージ

白いパンツと併せたイメージ

グラミチと併せたイメージ

ネイビーのプロッパーと併せたイメージ

ブラックのエアモックは正直何にでも合わせやすく、おしゃれ下手なオジサンには重宝します。
アウトドア色が強いアイテムなので、短パンとも併せたかったのですが、オジサンの足を世にさらすのは気が引けたので、短パンは割愛します…
ただし、カラフルなモデルについては、正直難しい気もしますので、落ち着いた色のエアモックの購入をおすすめします。
【2024年版】2006年製エアモックの探し方と購入時の注意点

今回レビューしている「エアモック2006年(復刻)」ですが、はじめに申し上げますと、既に販売はしておらず通常ルートは購入できません。購入するとなるとフリマサイトや古着屋、スニダン等で購入は可能です。
ただし、購入はオススメしません!
その理由として「ソール剥がれ」が挙げられます。
この記事をご覧いただくような方であれば一度は耳にしているキーワードに「加水分解」という物がありますが、この「エアモック」でも劣化は起こります。具体的な症状としては、ソールがベロンと剥がれます。
他のヴィンテージスニーカーで起こるようなソールがボロボロと崩れるというものではなく、アッパーとアウトソールを接着している接着剤が劣化し、ソールがベロンと剥がれるのです。
実は筆者の保有する「エアモック」も一度ソールが剝がれており、補修しています。

補修後、アッパーとアウトソールを縫い合わせてもらった
こちらの写真を見ていただくと分かりますが、アッパーとアウトソールを接着後に縫い付けてもらっています。
恐らく街の靴屋さんでも接着のみの補修はしてもらえると思うのですが、補修しても再度剥がれてしまうケースが多いようで、筆者は接着後に縫ってくれるショップを探して補修を施しています。
おすすめしない最大のポイントはコレです。
もしミントコンディションの商品を購入できたとしても、補修代(往復送料込み)で+10,000円以上かかってしまうので、コレクターの方以外には購入はおすすめできません。
中古で着用感のある個体であれば、5,000円以下での購入も可能ですが、商品代金以上にお金が飛んでいきます…
で、あれば新しい他のシリーズを購入した方が良いでしょう。
時代を超えて愛される名作。ナイキ エアモックは今こそ履きたい一足
1994年にACGから登場したエアモックは、そのユニークなデザインと快適な履き心地で、発売から30年近く経った今でも多くのファンを魅了し続けています。
靴紐のないスリッポンタイプでありながら、ヒール部分のドローコードでフィット感を調整できる画期的な一足です。ミニマルで洗練されたデザインは、流行に左右されることなく、様々なスタイルに合わせることができます。
本記事で改めて注目したように、その魅力は時代を経ても色褪せることがありません。
時代を超えて愛される名作、ナイキ エアモック。この機会にその唯一無二の魅力を体感し、コーディネートに取り入れてみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人

| お名前 | おいも | 
| お仕事 | マーケティングなどなど | 
| プロフィール | ぎりぎり40代♂。 趣味は最近サボりがちなウォーキング(散歩)と料理。 年間365日のうち350日はスニーカーで過ごす。 ハイテク過ぎないスニーカーで色はグレーか白が好み。 | 
| 足のサイズ | 25cm(実寸)購入するのは26~27cm。 足のサイズは25cmだが偏平足でゆったりとしたサイズ感が好み。 ニューバランス→26cm ナイキ→26.5cm or 27cm アディダス→26cm | 
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